「牧口初代会長が重視した人格価値」第39回「SGIの日」記念提言④

牧口初代会長が重視した人格価値

こうした絶望の闇を打ち払う希望の光明は、「自己目的」ではなく、「何かのため、誰かのために苦悩するときだけ」( 『苦悩する人間』 山田邦雄・松田美佳訳、春秋社)輝き始めると強調したのは、第2次世界大戦中に強制収容所に送られた時の壮絶な体験をつづった 『夜と霧』 で知られる、精神医学者のヴィクトール・E・フランクル博士でした。

フランクル博士は、苦難に直面した時の人間精神による応戦劇の真骨頂を、次のように記しています。

「重要なのは、避けることのできない人生の運命的な打撃をどのような態度で、どのような姿勢で受け止めるかである。したがって人間は、最後の息を引き取るそのときまで、生きる意味をかちとってわがものとすることができる」(以下、V・E・フランクル/F・クロイツァー 『宿命を超えて、自己を超えて』 山田邦男・松田美佳訳、春秋社)

博士はこの人間精神による応戦を「態度価値」と名付けました。それは、「どのような条件、どのような状況のもとでも人生には意味がある」との思いを奮い起こし、苦難と向き合う中で、その生命の輝きが苦しみを抱える他の人々を勇気づける光明となり、「自分個人の悲劇を人間の勝利に変える」道をも開く価値創造に他なりません。

博士が人生最大の苦難に直面した第2次世界大戦中に、思想統制を強める日本の軍部権力と対峙(たいじ)したために投獄された、私ども創価学会の牧□常三郎初代会長も、この「態度価値」を貫く人間精神の輝きと相通じる、「人格価値」を育むことに教育の最大の目的があると訴えていました。

そして、自らの教育学説を発刊するにあたって、同じく教育者であった弟子の戸田城聖第2代会長との対話を通し、その名称に価値創造を意味する「創価」を冠したのです。

この 『創価教育学体系』 が発刊されてから来年で85周年を迎えますが、牧口初代会長はその中で人格価値を体現した姿の例として、「普段はそれほど注目されなくても、何か起こった時には 『あの人がいてくれれば』 と皆から慕われる人であり、常に社会で人々の心をつなぐ存在」( 『牧口常三郎全集第5巻』 第三文明社、趣意)を挙げていました。