『アメリカ創価大学の挑戦』随筆 人間世紀の光 (002) 2004-1-9
2004.01.09投稿
◇随筆人間世紀の光(002)『アメリカ創価大学の挑戦』 2004-1-9
学び抜け民衆のために!
“友愛”と“共生”の世界市民の大学
「諸君よ、『祖国が諸君のために何をしてくれるか』を問うなかれ。『自分が祖国のために何ができるか』を問いたまえ!」
理想に燃えて新しきアメリカの建設に挑んだ、第三十五代大統領ケネディの、有名な就任式での演説であった。
二〇〇一年の開学から四年目に入る、わがアメリカ創価大学(SUA)の学生たちも、かの若き大統領に劣らぬ挑戦の心を燃やしている。
「私たちがSUAの建設の主体者だ!」。これが学生たちの気概である。
ヘイズ教務部長が語っておられたそうだ。
――他大学の学生は、多くの場合、経済的に豊かになるために教育を受けようと考えがちだが、SUAの学生は“よい仕事を得るため”とか、“裕福になるため”等の、自分の欲求のためだけには学んでいない。
彼らは他者を気遣う心にあふれ、常に“何のために学ぶのか”を意識して勉学に取り組んでいる――と。
なんと素晴らしい学生たちであろうか!
今すぐにも、私は、オレンジ郡アリソビエホの美しきキャンパスに飛び、君たちと固い握手を交わし、未来を大いに語り合いたい。
先日も、中国・広東省の総合大学「肇慶学院」から私への名誉教授称号の授与式に、SUAの学生たちの凛々しき姿があった。それは、短期留学や帰省などで日本に滞在中のメンバーや、新たに第四期生として入学が決まっている友の代表らであった。
「二十一世紀の『人間主義』『平和主義』『文化主義』の勝利を託す宝の英才、ようこそ!」と呼びかけると、皆、弾ける笑顔で応えてくれた。“若き創立者”の決意に燃えていた。
四期生が入学すると、全学年が誇りも高く揃いゆくのだ。そして、未来への希望に燃えゆく明年には、いよいよ最初の卒業生として一期生が羽ばたくのだ!
SUAの輝く未来を想い、私の胸は喜びに高鳴る。
これまで、SUAを訪問された、ポーリング・ジュニア博士、マハトマ・ガンジーの令孫アルン・ガンジー博士、モアハウス大学のカーター所長、ノーベル平和賞受賞者のロートブラット博士、デラウェア大学のローゼル学長、ノーベル財団のマイケル・ノーベル博士、アメリカ実践哲学協会のマリノフ会長など、多くの識者も、絶大なエールを送ってくださっている。
本当に嬉しい限りだ。
「世界市民」の育成をめざすSUAでは、外国語の習得に力を入れている。
学生は、中国語、スペイン語、日本語から一言語を選んで、三年次の一学期間、その言語が話される国に短期留学できる。「生きた語学」を学ぶコースが開かれている。
既に留学を終えたメンバーは、「世界市民としての使命を実感できた」と勇んで語っていたそうだ。また、これから出発する友もいる。
私は、深き使命に生き抜く“学びの旅”が、健康で無事であるよう祈っている。
一方、キャンパスでは、冬季休暇が明けると、再び真剣勝負の勉学の日々が始まる。
温暖なカリフォルニアとはいえ、一月の夜は冷え込む。そのなかで、二十四時間、休むことなく開いている図書館の学習室の灯も、深夜まで輝くことになる。
睡魔と戦いながら、「あと五分頑張ろう」「このパラグラフ(段落)だけは読み切ろう」と、分厚いテキストと格闘する友がいる。父親が病に倒れるなど、心配事を抱えながら、猛勉強している人もいるだろう。
苦労や悩みのないことが幸福ではない。労苦のなかで、「金剛の人格」を鍛え上げた人が幸福なのである。本来、この人格を築き上げることを「教養」というのだ。
若き日の創価教育の父・牧口先生も、貧しく、働きながら学ぶしかなかった。わずかでも時間ができると、必ず本を開いた。その勤勉な姿は、周囲から「勉強給仕」と呼ばれるほどであった。
学んで、学んで、徹して学び抜く――牧口先生の偉大さは、その大情熱を、一生涯、民衆の幸福のために燃やし続けたことだ。
SUAに学ぶ諸君も、同じである。「民衆のため」という尊い使命の前には、勉強のしすぎ、学びすぎということは絶対にない。諸君はあくまで理想を高く、偉大なる人生の、使命ある人生の幾山河を歩み抜いてほしい。
諸君は、決意も固き先駆者である。
古今東西、庶民からかけ離れ、自己の利欲のために人びとを踏みつけにして恥じぬ、「才能ある畜生」のごとき指導者、エリートがなんと多かったことか。
諸君が、この非人間的な不幸の流転を、断じて変えるのだ!
SUAは、数多くの市民の願いと熱意が凝結した“民衆立の大学”である。
そうした陰の一人に、草創からの同志である、神奈川の岸福寿さんがおられる。
昭和三十九年、私が発表した創価大学の構想が、岸さんの人生を変えた。深く共鳴した彼は、自分も未来のために教育に貢献したいと、消防士を辞め、私財を投じて幼稚園を設立されたのだ。
私と同年の岸さんは、戦争で兄を失い、働きながら苦学を続けられた。だからこそ、教育を大事にする情熱は人一倍であった。
大阪・交野の創価女子学園(現・関西創価学園)の開校二年目には、地方出身の生徒のためにと、自ら私設の“寮”を提供された。私が岸さんと初めてお会いしたのも、この“寮”であった。
創価大学を支える“父母の集い”では、神奈川県の責任者を務められ、札幌創価幼稚園の設立の時は、幼稚園経営の経験を踏まえた貴重な助言をいただいた。
晩年の数年間は病魔との闘いであったが、SUAの建設を心から支援してくださった。亡くなる直前まで、SUAが旭日のごとく発展する姿を、わが眼で見たいと願っておられた。
そして二〇〇一年の六月、SUAの開学を見届けるかのように、七十三歳で逝去されたのである。
私は、SUAのキャンパスに、岸さんを偲ぶ木を植えていただいた。
この尊き偉大なる力を持つ、庶民という英雄の「心」を絶対に忘れてはならない。
君たちのスクラムは、常に「励ましの方向へ」「友情の方向へ」と進んでいる。
入学当初、英語で行われる授業についていけずに悩む友を励まし、毎晩、テキストを読み合った友がいた。
寮の世話役を進んで買って出て、勉強時間を割いても、後輩の相談にのる先輩たちがいることも知っている。
三十以上も生まれたクラブには、「祖国の文化を知ってほしい」「自分ができることを伝えたい」と、互いに教え学び合う、尊くして強き連帯感がある。
SUAは、多様な文化的背景をもった英才たちが集う、「友愛」と「共生」の世界の未来図といってよい。
それは、国家・民族・文化等の差異を超え、「人間」という宝で世界を結ぶ、偉大なる指導者を育成しゆく、人類の希望の大学なのだ。
わが生涯の夢である、若き知性の英雄たちよ!
君たちが、世界中で手を取り合い、人類の幸福のため、平和の舵取りをする時は、すぐそこまで到来している。
君たちよ!君たちには、真剣に学問に取り組む責任がある。SUAに期待を寄せ、信じている、良識ある無数の人びとのためにも、断じて勝利しゆく使命があるのだ。
「人間はおのれを教育しなければならぬ」とは、アメリカの哲人エマソンの、若き日の叫びであった。
自身の血潮を滾らせ、徹して学べ!真剣に学び抜け!
人類が待ちに待った、民衆が輝く勝利の歴史を、君たちよ、絶対に築き抜いてくれ給え!