信仰体験

バネ指(弾発指)乗り越えつかんだもの 介護施設等300カ所で演奏活動〈信仰体験 登攀者〉 和楽器バンドで三味線奏でる 2019年6月15日 心を打つのは心

投稿日:2019年6月15日 更新日:

〈信仰体験 登攀者〉 和楽器バンドで三味線奏でる 2019年6月15日
心を打つのは心
バネ指(弾発指)乗り越えつかんだもの
介護施設等300カ所で演奏活動

 優しくて奥深い三味線の音色が青空に響く。斎藤好一さん(70)=香川県丸亀市、城北支部、支部長、芸術部員=は、和楽器バンド「まほろば」のリーダーを務める。80曲を超すレパートリーは、演歌、民謡、歌謡曲など。これまで県内外300カ所以上の高齢者介護施設等で、ボランティア演奏を披露してきた。最近、長年のファンからこんな声を掛けられる。「あんた音が変わった。ようなったなぁ」。斎藤さんは、「自分では分からんもんです」と笑うが、確かにつかみ取ったものがある。

 5月のある日。丸亀市内にある老人ホームの特設ステージに和楽器バンド「まほろば」が姿を現した。三味線、和太鼓、電子笛の3人組。
 まずは名曲「川の流れのように」から演奏をスタート。さらに「津軽じょんがら節」や「きよしのズンドコ節」など誰もが知る曲を次々と。
 はじめは、じっと聴いていた高齢者たちも、曲が進むほどに、手拍子を打ったり、体を左右に揺らしたり。演奏が終わる頃には、皆ニコニコ顔で、「また来てな」「三味線をやっとったのを思い出してまた弾きたくなった」と。
 「中には、寿命が延びたなんて言う人もいます(笑い)。施設では、毎日同じサイクルの生活。皆さんに、少しでも楽しんでいただき、“まほろば”を感じてもらえれば」
 バンド名の「まほろば」は、「素晴らしい場所」との意味がある古語。そんな空間を音楽で創り出したいと、斎藤さんは挑戦してきた。
 * 
 ビートルズに憧れ、仲間とロックバンドを組んだ青春時代。市役所に勤務するようになってからも演奏活動は続けた。
 だが、ずっと悩んでいたことがあった。
 「ライブをやっても盛り上がってくれるのは、ファンや仲間内だけ。もっと多くの人たちに届く音楽を演奏できないか」
 そんな話になると、決まって音楽仲間の一人が口を開いた。
 「創価学会の信心で、自分の境涯を開いていけば、必ずできる。一緒に題目を唱えよう」
 しかし、音楽と信心に何の関係があるのか。到底受け入れることができなかった。
 ある日、音楽雑誌の記事が目に留まった。
 それは、世界的ジャズピアニストであるハービー・ハンコック氏が、SGI()メンバーとして、“南無妙法蓮華経の題目を唱える中で生命力が活性化し、聴衆の心を打つ演奏を生み出している”とのインタビューだった。
 この記事をきっかけに、友人と唱題を始めた。座談会に行くと、参加者の底抜けに明るく、温かい雰囲気が心地よかった。
 「1年だけやってみる」と1979年(昭和54年)、創価学会に入会する。
 2年後には、四国研修道場を訪れた池田先生との出会いを刻む。
 創価班として任務に就いていた斎藤さん。目の前の先生の姿は「王者の風格」だった。一瞬の出会いに、徹底して庶民を守り、励まし抜く師の大きな心を感じた。
 その後、一層、学会活動に励み、音楽にも磨きをかけていく。そして“もっと多くの人に喜んでもらいたい”と始めたのが三味線であり、和楽器バンドだった。
 ギターと三味線。同じ弦楽器とはいえ、全く勝手が違う。独学で練習を重ね、2001年(平成13年)に老人ホームなどへの訪問演奏を始めた。日本の伝統音楽は高齢者にとってもなじみが深い。すぐに評判が広がり、県内各地の施設から引っ張りだこの人気グループに。
 活躍の場を広げていた12年、香川芸術部のイベントが四国研修道場で開催された。師匠との出会いを刻んだ原点の地。演奏に力がこもる。だがこの時、斎藤さんは右手にわずかな違和感を覚えていた。

 イベントを大成功で終え、しばらくしたある朝。起きると右手の薬指が曲がったまま伸びない。左手でゆっくり伸ばしていくと、“コクッ”と音がし、痛みが走った。
 マッサージなどで指をほぐしたが、徐々に曲げ伸ばしができなくなっていく。さらに、人さし指、中指にも症状が広がっていった。
 長年勤めた市役所の定年退職を目前に控え、いよいよ本格的に演奏活動に力を入れようという時。三味線奏者にとって致命的とも言える「バネ指(弾発指)」だった。
 病院で握力を測ると「0」。医師は、プロの奏者でないのに、ここまで重度で、しかも複数の指に広がっている症状に驚いた。度重なるライブとそれに向けた練習で、指を酷使し過ぎていたのだ。
 初めは、ステロイド注射で症状は緩和されたが、次第に効かなくなっていく。
 ついに、手術を決断。とはいえ、難易度が高く、医師からは「100%元に戻るとは思わないでください」と、くぎを刺された。
 “もう思い通りに演奏できなくなるかもしれない。待ってくれている人に申し訳ない”。不安と悔しさが胸に迫った。
 「今こそ題目だよ」
 地域の同志は、温かく励ましてくれた。
 「病によりて道心はをこり候なり」(御書1480ページ)。斎藤さんは何度も胸に刻み、題目闘争を重ねた。
 背筋をぴんと伸ばし、真っすぐに御本尊を見つめ、朗々と題目を唱える。すると、“必ず治して、また演奏します”との決意がみなぎっていく。“強い父の姿を示したい”と、7人の子どもたちの前でも決して弱音を吐かなかった。
 その後、左手にも同様の症状が表れた。結局、1年半の間に、6本の指にメスを入れた。
 「それまでは、お願いや頼み事ばかりの祈りやった。しかし、祈っていく中で、この苦難にも必ず意味があるんやって、“ただただ、ありがとうございます”という題目になっていった」
 感謝の祈りは生命力を湧き上がらせる。手術後は、懸命にリハビリに励み、日を追うごとに好転。生命の変化は、演奏活動にも表れた。
 「ライブ中も、“もっと喜んでもらいたい”と、耳を傾けてくれる一人一人の顔がよく見えるようになったんです」
 かつて入会前に悩んだ、“多くの人の心に届く音楽を奏でたい”との思い。
 「病を経験し、祈りに祈り抜く中で、ようやくその境涯が開けてきた」
 人の心を打つのは心――。だからこそ、信心で心を磨き、もっと多くの人に、喜びと希望を広げていきたい。
 本年、入会から40年を迎えた斎藤さんのばちさばきに魂が込もる。

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