「パキスタンの少女マララさんの信念」第39回「SGIの日」記念提言③
2014.01.26投稿
パキスタンの少女マララさんの信念
第一の柱として提起したいのは、「常に希望から出発する価値創造」です。
昨年4月、国連総会で武器貿易条約が採択され、戦車や戦闘機といった大型兵器から自動小銃などの小型武器にいたるまで、通常兵器の輸出入を初めて規制する条約が誕生しました。
対人地雷の禁止やクラスター爆弾の禁止に続き、この条約の制定に最大の後押しをしたのもNGO(非政府組織)の連帯でした。
いずれも、明確なビジョンを掲げて、民衆が力を合わせて行動する時、「先例のない変化を歴史に与える道」が開かれることを示した希望の実例に他ならないと言えましょう。長年、武器取引の規制を訴えてきた私も、条約が一日も早く発効し、人権侵害や残虐行為を助長してきた武器の拡散に歯止めがかかることを強く願うものです。
今なお世界では、紛争や内戦に加えて、武装勢力や犯罪組織による暴力が横行し、問答無用で命が奪われたり、深い傷を負わされる人が後を絶ちません。
女性の教育を受ける権利を訴える中、2年前に銃撃を受けて瀕死(ひんし)の重傷を負ったパキスタンの少女、マララ・ユスフザイさんもその一人です。奇跡的に一命をとりとめた後も屈することなく行動を続ける彼女は、昨年7月に国連本部でスピーチした折に、その心情をこう語りました。
「わたしのなかで変わったことなど、なにひとつありません。あるとすれば、ひとつだけ。弱さと恐怖と絶望が消え、強さと力と勇気が生まれたのです。わたしはそれまでと同じマララです。目標に向かっていく気持ちも変わっていません。希望も、夢も、前と同じです」(マララ・ユスフザイ/クリスティーナ・ラム 『わたしはマララ』 金原瑞人・西田佳子訳、学研パブリッシング)
その後も脅迫を受けながら、一歩も退(ひ)かず行動を続ける彼女を支えているもの──それは、自分と同じく理不尽な抑圧や不当な扱いに苦しんでいる女性や子どもたちが声を上げ、状況を改善するために自ら立ち上がることを願う、強い思いに発したものでした。
災害や経済危機のような突発的な脅威に見舞われたり、日常的に行われる政治的な弾圧や人権抑圧の脅威にさらされたりすると、人間は恐怖や悲しみ、また苦しみのあまり、深い絶望に沈み込んで、身動きがとれなくなってしまうことが少なくありません。
しかし、絶望の闇に人々の心が覆われ、あきらめと無力感で立ちすくんでしまう状態が続けば、問題の解決は遠のくばかりか、同様の脅威が各地で猛威を振るう事態が繰り返されてしまうことになります。