1914年(大正3年)に東京駅が開業して100年。一昨年、戦災で焼失した部分の復元工事を終えた「ドーム型屋根の赤れんが駅舎」は、新たな観光スポットとなっている
▼〝赤れんがの壁面にドーム型屋根の建物〟というと、57年(昭和32年)7月17日、学会の「大阪大会」の会場となった中之島の中央公会堂が思い浮かぶ。実はどちらも、辰野金吾氏の設計によるものだ
▼日本銀行本店など200を超える建築に携わり、〝ヨーロッパ風日本建築の開祖〟といわれる辰野氏も、初めから英才だったわけではない。工部省工学寮(現在の東京大学工学部)に最下位で滑り込み、猛勉強の末、首席で卒業。イギリスで建築学を学んだ。そんな自身を「俺は頭が良くない。だから人が一する時は二倍、二する時は四倍必ず努力してきた」と語ったという
▼人生はしばしば、建築になぞらえられる。それは建築が、力学、デザイン、法律、歴史……つまり人間と環境に関わる万般の知識と知恵を結集した総合芸術だからであろう
▼英語「アーキテクチャ(建築)」の元来の意味は〝最上の技術者〟である。最上の努力、最上の情熱をささげたものだけが、時の流れに耐えて輝き続けると思える。建築も、そして人生も。(明)