正義28 小説「新・人間革命」27巻

学会を誹謗する僧の大半は若手であり、世間の常識に疎く、態度が横柄な者も少なくなかった。
それでも学会員は、彼らを守り、寺のために尽力してきた。
彼らが、学会への憎悪を募らせ、理不尽な誹謗をエスカレートさせていった背景には、学会を裏切っていった「背信の徒」の暗躍もあった。弁護士の山脇友政である。
学会員であった彼は、弁護士として学会の法的事務などに携わるようになった。
すると、次第に自分の法的知識を鼻にかけ、先輩幹部を見下し、誰の言うことも聞かなくなっていった。慢心に毒されていったのだ。
「人間の精神は慢心へと傾きやすく、慢心は精神を腐敗させる」(注)とは、フランスの作家ジョルジュ・サンドの警句である。
山脇は、学会の仕事だけでなく、宗門の法的な諸問題にも関与するようになり、宗内に人脈を広げていった。
その一方で、弁護士の立場を利用して金儲けを企て、会社経営にも手を出していく。
学会活動もしなくなり、信心を失い、金銭欲に翻弄され、拝金主義に陥っていったのである。
しかし、やがて、杜撰な経営によって事業は破綻し、莫大な負債を抱えることになるのだ。
行き詰まった彼は、虚言を重ね、さまざまな事件を起こし、遂には、社会的にも厳しく裁かれていくことになる。
山本伸一は、前々から、山脇のことが心配でならなかった。
信仰の正道を歩ませたかった。
真剣に信心に励むよう、諄々と諭したこともあった。時には、厳しく指導をしたこともあった。
だが、慢心に侵された彼は、むしろ伸一を疎ましく思い、指導されるたびに、恨みと憎悪を募らせていったのだ。
山脇は、信徒団体である学会は、どんなに大きくとも、所詮は、宗門の下にあり、屈服せざるを得ない存在であると考えていた。
そこで宗門に取り入り、自分が学会との窓口となり、宗門の権威を利用して、学会を操ろうと画策したのである。