正義

正義32 小説「新・人間革命」27巻

投稿日:2014年2月8日 更新日:

静寂な夜であった。
山本伸一は、一九八一年(昭和五十六年)に執り行われる、日蓮大聖人の第七百遠忌法要を思った。
彼は、その慶讃委員長であり、この式典を、僧俗一丸となって荘厳し、広宣流布への大前進を期す佳節にしようと、固く決意していた。
それだけに、悪侶による僧俗和合の攪乱と広宣流布の破壊が、残念で残念でならなかった。
魔軍を喜ばせるだけだからだ。
彼は、ホテルの机に向かった。
後世のために、この出来事の真実とわが思いを、書きとどめておきたかった。
ペンを手にすると、苦しみ抜いてきた同志の顔が浮かんでは消えた。
「宗門問題起こる。心針に刺されたる如く辛く痛し」──こう書くと、熱湯のごとき憤怒と激情が、彼の胸にほとばしった。
「広宣流布のために、僧俗一致して前進せむとする私達の訴えを、何故、踏みにじり、理不盡の攻撃をなすのか」
そして、「大折伏に血みどろになりて、三類の強敵と戦い、疲れたる佛子」に、なぜ、このような迫害が繰り返されるのか、到底、理解しがたいとの真情を綴った。
「尊くして 愛する 佛子の悲しみと怒りと、侘しさと辛き思いを知り、断腸の日々なりき。此の火蓋、大分より起れり」
彼は、さらに、福井、兵庫、千葉などで、健気なる同志を迫害する悪侶が現れた無念を書き記し、第七百遠忌法要の成功を、「血涙をもって祈り奉りしもの也」と認めた。
ホテルの窓から外を見た。漆黒の空に、星々が美しく瞬いていた。
「これで、ひとたびは、事態は沈静化へ向かうであろう。しかし、広宣流布の道は、魔との永遠の闘争である。
ゆえに魔は、これからも、さまざまな姿を現じて、大法弘通に生きるわれらに襲いかかるであろう……」
彼は、安堵の情に酔うわけにはいかなかった。
事実、既に、この時、学会と宗門を分断する謀略の次の矢が放たれていたのである。

-正義
-, , ,

執筆者:

関連記事

no image

正義2 小説「新・人間革命」27巻

ロシアの作家・チェーホフは記した。 「新しい生活のあけぼのが輝いて、正義が凱歌を奏する時が必ず来る」(注) 一九七八年(昭和五十三年)四月、創価学会は、山本伸一の第三代会長就任十八周年を目前にして、民 …

no image

正義45 小説「新・人間革命」27巻

静岡指導を終えた山本伸一は、四月二十一日午後、中部指導に向かった。 夕刻、中部入りした伸一は、午後六時前から、愛知、三重、岐阜の代表幹部と懇談会をもった。 参加者からは、この年一月の支部制発足以来、大 …

no image

正義11 小説「新・人間革命」27巻

牧口常三郎の起こした創価教育学会の宗教運動は、長く民衆を支配してきた僧侶によるものではなく、在家、民衆の手による宗教革命であった。 牧口は、日蓮正宗も、時代の変遷のなかで、儀式主義に陥り、葬式仏教化し …

no image

正義22 小説「新・人間革命」27巻

堀米日淳法主は、戸田城聖が、生涯の願業として掲げた会員七十五万世帯を成し遂げて逝去した直後の、一九五八年(昭和三十三年)五月の第十八回本部総会で、戸田について、次のように讃嘆している。 「御承知の通り …

no image

正義66 新・人間革命 27巻

 山本伸一は、関西では、創立者として創価女子学園を訪問したほか、関西牧口記念館、兵庫文化会館などを次々と訪れた。  行く先々で同志と記念のカメラに納まり、懇談会等をもち、入魂の励ましに徹した。  四月 …