正義5 小説「新・人間革命」27巻

日蓮大聖人は仰せである。
「大悪は大善の来るべき瑞相なり、一閻浮提うちみだすならば閻浮提内広令流布はよも疑い候はじ」(御書一四六七p)
──大悪は、大善が来る前兆である。一閻浮提すなわち全世界がひどく乱れたならば、法華経に説かれている「閻浮提の内に広く流布せしめる」という文が実現することは、よもや疑いようがないであろう。
山本伸一は、この御聖訓のうえから、「戦争が絶えず、あらゆる危機的な状況が打ち続く今こそ、世界広宣流布の時代が到来したのだ。
人類は、日蓮大聖人の仏法を渇望しているのだ」と、ますます強い確信をいだいた。
仏法には、現代がかかえる諸問題の、根本的な解決の原理と方途が示されている。
法華経では、万人が仏の生命を具えた尊厳無比なる存在であることが説かれ、他者の幸せを願う「慈悲」という生き方が示されている。
その法理を、人間一人ひとりの胸中に打ち立てていってこそ、社会に蔓延する生命軽視の風潮を転換し、戦争の惨禍にピリオドを打つことができるのだ。
また、自分と環境とが不可分の関係にあるという仏法の「依正不二」の哲理は、環境破壊をもたらした文明の在り方を問い直し、人類繁栄の新たな道を開く哲学となろう。
肉体と精神とは密接不可分の関係にあると説く「色心不二」もまた、人間の全体像を見失いがちな現代医学の進むべき道を示す道標となる。
さらに、人は、一人で生きているのではなく、互いに深い因縁で結ばれ、支え合って存在しているという仏法の「縁起」の思想は、分断した人間と人間を結合させる力となろう。
生と死を解明し、生命変革の方途を明かし、真実の人間道を示す仏法は、人類の珠玉の叡智であり、至宝である。
その仏法を、人類の共有財産とし、平和と繁栄を築き上げることこそが広宣流布である。
ゆえに伸一は、世界各国・地域を巡り、仏法という大法理を伝え、人びとの心田に、幸福と平和の種子を蒔き続けてきたのだ。