正義

正義60 小説「新・人間革命」27巻

投稿日:2014年3月13日 更新日:

波多光子は、自分としては、露崎アキと二人で一生懸命に葬儀を執り行ったつもりであった。
しかし、それでも歳月を経るごとに、「本当にあんなんで、よかったんやろうか。
故人の一家に惨めな思いをさせたのではないか」という気持ちが、心の底に、澱のようにたまっていったのである。
山本伸一は、彼女の話を聴き終わると、大きく頷いた。
「おばあちゃんは偉い! 最も清らかで、尊い、真心の葬儀です。それが本当の葬儀です。故人も、最高に喜んでいるでしょう。
あなたは、広宣流布の大功労者です」
そして、同行の幹部らに語った。
「君たちは、大学を出て、若くして幹部になったことで、自分は偉いかのように思ったりしてはいけません。
そんな考えが微塵でもあるなら、既に生命が慢心に毒されている証拠です。
君たちには、地域広布に命をかけてきた、このおばあちゃんのような戦いはできていないではありませんか!
誰が、本当に広宣流布を推進してくださっているのか、創価学会を支えてくださっているのか──私は、じっと見ています。
もしも、要領主義がまかり通り、捨て身になって戦いもせず、人の努力を自分の手柄のように報告だけしている者がリーダーになって君臨していけば、真面目な会員がかわいそうです。そんな創価学会にしてはならない」
厳しい口調であった。
それから伸一は、包み込むような笑みを、波多に向けて言った。
「おばあちゃん、ほかに何かありますか」
瞬間、彼女の表情が曇った。
「先生。実はな、私を折伏してくれた露崎アキさんが、心臓病で入院しとりますんや。
あの人はな、私なんどより、もっともっと信心強盛でな。『先生に会いたい、会いたい』と、いつも言うとりました。
元気なら、今日、一緒に、先生とお会いできましたのにな」
同志を思う謙虚な言葉であった。謙虚さは境涯の高さ、大きさの表れといえよう。

-正義
-,

執筆者:

関連記事

no image

正義52 小説「新・人間革命」27巻

「三重文化合唱祭」の午後の部が始まる前から、糸のような雨が断続的に降っていた。  文化合唱祭の最後に、山本伸一がマイクに向かった。 彼は、雨の中での出演者の熱唱と熱演を讃えたあと、出席した地域の来賓や …

no image

正義2 小説「新・人間革命」27巻

ロシアの作家・チェーホフは記した。 「新しい生活のあけぼのが輝いて、正義が凱歌を奏する時が必ず来る」(注) 一九七八年(昭和五十三年)四月、創価学会は、山本伸一の第三代会長就任十八周年を目前にして、民 …

no image

正義40 小説「新・人間革命」27巻

伊東平和会館の開館記念勤行会で、山本伸一は皆と勤行したあと、懇談的に話をした。 彼は、日蓮大聖人の伊豆流罪、また、初代会長・牧口常三郎が、伊豆の下田で官憲に出頭を求められて、投獄、獄死した大弾圧に思い …

no image

正義36 小説「新・人間革命」27巻

妙楽大師の言葉に、「礼楽前きに馳せて真道後に啓らく」(御書一八七p)とある。 「礼楽」とは、「礼儀」と「音楽」のことで、中国の伝統的な生活規範である。 「礼」は、行いを戒め、社会の秩序を生み出し、「楽 …

no image

正義24 小説「新・人間革命」27巻

一九七七年(昭和五十二年)の一月十五日、山本伸一は第九回教学部大会で、「仏教史観を語る」と題して記念講演を行った。 この講演で彼は、「宗教のための人間」から、「人間のための宗教」への大転回点こそ、仏教 …