福運があれば、努力が、そのまま報われ、幸せの果実となる。激闘12 小説「新・人間革命」27巻

座談会場では、凜とした気品を漂わせた和服姿の婦人が、宗教の教えには、高低浅深があることを訴えていた。
文京支部長の田岡治子であった。
「人は、信じる対象によって大きな影響を受けます。
詐欺師を立派な人だと思い込めば、お金などを騙し取られてしまいます。
しかし、本当に優れた友だち思いの人を信じてついていけば、多くのことを学べますし、さまざまなアドバイスも受けられ、自身を向上させていくことができます。
また、間違った地図を正しいと信じれば、道に迷い、目的地には着けません。
でも、正しい地図を持ち、その通りに進めば、目的地に行くことができます。
ましてや宗教というのは、その人の生き方の根本となる教えです。
いわば、幸福をめざす地図です。
もし、誤った教えを正しいと信じてしまえば、人生を根本から狂わせてしまうことになりかねません。
だから、幸福を築くために
は、正しい宗教を信じる必要があるんです。宗教は、皆、同じであるなどということはありません」
さらに、彼女は、数ある宗教のなかで、なぜ、日蓮大聖人の仏法が最高の教えであるのかを、力を込めて語っていった。
金田都留子にとっては、初めて聞く話ばかりであったが、納得することができた。
そして、次に話をしたのが、文京支部長代理の山本伸一であった。彼は、二十五歳の青年であった。
伸一は、座談会に来た金田姉妹のうち、都留子のやつれた姿が気になって仕方がなかった。
力強い彼の声が響いた。
「多くの人は皆、幸せになろうと、自分なりに必死の努力をしています。
しかし、頑張ったからといって、皆が皆、必ずしも幸福になれるとは限らない。
では、同じように努力しても、成功し、幸せになれる人と、なれない人がいるのはなぜか。
それは、福運によるんです。自分に福運があれば、努力が、そのまま報われ、幸せの果実となっていきます」