「広宣流布の使命を自覚する時、境涯革命の扉が開かれる」激闘15 小説「新・人間革命」27巻

山本伸一は、「立正安国論」を拝して、日蓮大聖人の仏法を実践するとは、どういうことかを、わかりやすく語っていった。
「大聖人の仏法は、ただ単に、自分が成仏すればよい、自分だけが幸せになればよいという教えではありません。
周囲の人びとも共に幸せになり、社会の繁栄があってこそ、自身の安穏、幸せもあると教えているんです。
たとえば、災害に遭って周りの人たちが苦しんでいれば、自分は無事でも、幸せを感じることなど、できないではありませんか。
ゆえに大聖人は、自分だけが題目を唱えていればよいというのではなく、折伏・弘教の実践を、仏道修行の要諦として示されているんです。
つまり、エゴイズムに安住するのではなく、人びとの幸福のために正法を弘めるなかに、自身の最高の幸福があるんです。
言い換えれば、日蓮大聖人の仏法は、折伏・弘教を掲げた広宣流布の宗教であることが、大きな特色といえます。
では、なんのための広宣流布か。
それは、「立正安国」のためです。「立正」とは、人びとの胸中に正法を打ち立てることであり、その帰結として、「安国」すなわち、社会の繁栄と平和を実現していくんです。
したがって、大聖人の仏法を持った私たちには、民衆が心から幸せであると言える社会を、建設していく使命があるんです。
社会を見てください。あまりにも多くの人びとが、貧乏、病気、家庭不和などに悩み苦しんでいるではありませんか!
世界を見てください。動乱、戦争が絶えないではありませんか!
この人びとの苦悩を解決するために、私たちは地涌の菩薩としての大使命をもって、この世に出現してきたんです。
私たちの日々の活動が、世界の未来を決していくんです」
金田都留子は、自分の世界が、大きく広がっていく思いがした。これまで、考えもしなかった壮大な歴史の流れのなかに、自分がいることを感じた。
人は、広宣流布の使命を自覚する時、境涯革命の扉が開かれるのだ。