「自分に勝つことが、一切の勝利につながる」激闘16 小説「新・人間革命」27巻
2014.04.08投稿
金田都留子は、自分も広宣流布の大理想を担う一人であると思うと、胸は高鳴り、体が打ち震える思いがした。
山本伸一は、彼女の心を察したかのように、微笑みを浮かべて語った。
「仏法を持った私たちの使命は、深く、大きい。広宣流布というのは、世界平和の実現がかかった、人類の命運を決する戦いなんです。
皆さんは、その壮大にして崇高な戦いを起こそうというのですから、自分の小さな悩みや苦しみに打ちひしがれ、意気消沈しているようなことがあってはなりません。
『全世界を征服せんとせば、まず汝みずからを征服せよ』(注)という言葉があります。
すべては、自己自身との戦いです。自分に勝つことが、一切の勝利につながっていくんです」
彼女は、伸一の講義に、大きな感動を覚えた。
その胸に、広宣流布への使命の灯火が、明々とともされたのである。
以来、金田は、喜々として周囲の人びとに仏法を語っていった。
彼女の姉は、日ごとに、はつらつとしていく妹の姿に驚き、信心を始めた。
また、都留子の夫も入会した。
人間革命の実証ほど、仏法の偉大さの証明となる力はない。
金田は、いつも「死にたい」と思っていた自分が、日々、歓喜に燃えて生きていることを、人に語らずにはいられなかった。
彼女は、弘教の闘士に育っていった。
文京支部は、北海道の夕張や、東海道本線の主要駅、東京の八王子などにも戦線を広げ、いくつもの活動拠点が誕生していた。金田は、電車やバスを乗り継ぎ、会員の激励にも奔走するようになっていった。
ある時、数人の婦人たちと、神奈川方面へ活動に出かけた。
帰りの電車で伸一と会った。
乗客は少なかった。彼は言った。
「ご苦労様です。せっかくですから、御書を勉強しましょう。
御書はお持ちですか」
皆、バッグから御書を取り出した。
「一二六二ページの『日厳尼御前御返事』を開いてください」