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グローバルウオッチ

生命尊厳の“対話”で“先入観”の壁を越える 〈グローバルウオッチ〉 共生の未来へ 多文化時代を生きる㊤ 2018年6月1日

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〈グローバルウオッチ〉 共生の未来へ 多文化時代を生きる㊤ 2018年6月1日

生命尊厳の“対話”で“先入観”の壁を越える

ケベック市のSGIメンバーが朗らかに。同市は、北米におけるフランス文化発祥の地であり、旧市街は世界遺産に登録されている
ケベック市のSGIメンバーが朗らかに。同市は、北米におけるフランス文化発祥の地であり、旧市街は世界遺産に登録されている

現代社会の課題と向き合う「グローバルウオッチ 共生の未来へ」。文化的背景や価値観が異なる人々が共に生きる社会をつくる上で、学会員の生き方は、周囲にどのような価値を提示しているのか。多文化共生の象徴として知られるカナダ・ケベック州の友を取材した。(記事=小野顕一)

世界で初めて、多様な文化を平等に尊重する「多文化主義」政策を導入したカナダ。この国では原則、民族や宗教、出身国などで差別されることはない。
他の国からカナダに来た学会員に多文化主義について尋ねると、何人かが「仏法の生命尊厳の理念と響き合う」と答えた。
確かに、難民が来れば温かく迎え入れ、毎年20万人超の移民を受け入れながら、他国のような排斥運動などは起こらない。
欧州から移民した友は「カナダは世界の“鏡”であり、世界の“未来”といえるかもしれません」と実感を語った。

「交流」を重視

平成が始まった当時、98万人だった日本の在留外国人は247万人(昨年6月)に増加し、一方で日本人人口は2010年ごろから減少に転じている。
外国人と接する機会が加速度的に増える今、共生の理念として着目されつつあるのが、カナダ東部のケベック州で定着した「インターカルチュラリズム(間文化主義)」である。
「間(インター)」という言葉が示すように、異文化との交流に重きを置き、摩擦を乗り越えるために「対話」を重視する。フランス系が人口の7割に及ぶ同州はフランス語を唯一の公用語とし、中心文化と定めているが、多様化が進む日本社会においても、その間文化主義が参考になるとの指摘がなされている。

「ケベックは開放的で、誰でも温かく迎える土地柄です。文化が異なる人との交流は自然なことですが、ますます身近になっているように感じます」
ケベック市在住のナタリー・ドゥネシェールさん(圏副女子部長)はフランス生まれ。
父の仕事の関係でアフリカのナイジェリアやリベリア、アメリカなどを転々とし、スイスや日本での勤務を経て、この地に移り住んだ。
交流を重んじるケベックの市民性は、多様な文化の相互触発を促し、スタッフの出身国が40を超えるエンターテインメント集団「シルク・ドゥ・ソレイユ」など、画期的な芸術を生んだ。
同地のSGI(創価学会インタナショナル)の集いもまた、多様性にあふれている。
ドゥネシェールさんは言う。
「学会活動一つとっても、出身国によって、理論好きだったり、楽天的だったり、責任感が強かったり、個性豊かです」。そこで、ひときわ感じるのは、他の国から来た友が持つ信仰体験の重みだという。
文化が違えば、体験も多彩。それはやがて、さまざまな人を励ませる力になるだろう。
ある集いで、アフリカから移住した9人家族が、皆で団結して苦難を克服した体験を話した時のこと。参加者が目を輝かせて決意をみなぎらせる様子に、ドゥネシェールさんは心を打たれた。
「どんな苦境も見事に打開できる実証を目の当たりにし、“私にもできる”との確信が広がりました」
ケベック市で初めて参加した座談会で、中心者が語っていたことが忘れられない。
「このSGIの集いは、国連総会と同じ意義があります。私たちは、同じ人間として、この場にいる全ての人の悩みを解決していくからです」
諸外国での経験をもとに、マダガスカルでの就労支援などに携わるドゥネシェールさん。SGIの中で感じた「誰も置き去りにしない」という実感が、日を追うごとに増している。

根本的な尊敬

カナダは、国際社会における貢献でも知られるが、その一因として、カナダ人が重層的な帰属意識(アイデンティティー)を持つことが挙げられる。
ケベック州最大の都市モントリオール市は、カナダ第2の都市であり、人口規模では、パリに次いで世界第2位となるフランス語系の都市である。
同市で支部長を務めるファブリス・エンゲナさんはスイスで生まれた。カメルーン、ガボン等を経て、2007年にカナダへ。LGBT(性的少数者)差別の解消を図る団体の副代表として活動している。
アフリカは同性愛を違法とする国が大半。母国から移民せざるを得なくなった人々を支援する中で、ある時、「君が信じる仏教は、私を見捨てないんだね」と言われた。
「なぜ、そんな行動を続けていられるんだい?」
そう質問され、エンゲナさんが思い当たったのは、万人を敬う不軽菩薩の実践だった。
自分を迫害する人をも礼拝する信念――生命への根本的な尊敬に胸を熱くした。いつしか、それが自身の“行動理念”になっていることに気付いた。
エンゲナさんは、今の決意をこう語る。「誰かを差別することは、全ての人間を差別することなんです。そして、差別する人が一人でもいる限り、平和は訪れません。その差別を対話でなくすのが私の使命です」

「間」を結ぶ

多様性の尊重を国是とするカナダにあって、その社会を成り立たせる鍵があるという。
ケベック州にはフランス語系で北米最古の伝統を誇るラバル大学がある。同大学のフェルナンド・ジャルベ教育学部長は、「異文化を避けがちな人に、異文化への歩み寄りを促せる人の存在が大切です」と指摘。「創価の教育運動は、文化と文化の『間』を結ぶ空間づくりを、生き方として体現できる人を生み出している」と語った(インタビューの詳細は後日掲載)。

ケベック州シェルブルック市出身のブリジット・ポワリエさん(地区婦人部長)は、今月で入会10年。初めて信心の話を聞いた時、印象に残ったのが、多様性に富む信仰体験だった。
研究職に従事していたポワリエさんは、何ごとも懐疑的に考える性格で、池田先生の著作を片っ端から読んだという。
「“決め付けや先入観は絶対にいけない”と書かれていて、自分が持っていた価値観と同じだと感じました。その意味が丁寧に解説され、探し求めていた哲学だと直感しました」
ポワリエさんは、ファーストネーション(先住民族)との共生に向けて尽力するが、その妨げとなる問題の根本には、人と人との交流の不足があると話す。
「御書に“言葉を発する前に9回考えなさい”という一節がありますが、何かを言う前に、相手の思いにどれだけ敏感になれるかが問われているのではないでしょうか」
3年前に北部の都市に転居したポワリエさん。「カナダに世界中から同志が集まっていることを意義深く思います。自分が励まされたように、今度は私が行動していきたい」と語る。
池田大作先生は第38回「SGIの日」記念提言(2013年1月)で、自身の「対話」の軌跡を振り返り、「民族や宗教のラベルで埋もれてしまいがちな『その人ならではの人生の豊饒さ』と『その人を突き動かしてきた信念』を浮き彫りにしつつ、その相手との間でしかできない生命と生命との交響楽」を奏で合ってきたと述懐。「その交響楽の中で、民族や宗教といった自己と他者の違いを際立たせる差異さえも、『最良の自己』を互いに顕現していくための、かけがえのない旋律として立ち現れる」と述べている。
相手の人生の課題に、“わが事”のように関わり、相手を尊重しながら共に乗り越えようとする行動の一つ一つが、共生の価値を呼び覚ます。
その実像をカナダのメンバーの姿に見た。

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